十八億円の借金で、豪邸と別荘を手にしたものの、年間五千二百万円もの負担である。もっとも、院長先生が健在のときは、それでもよかった。それくらいの負担は、病院を経営していれば、なんでもなかったのだ。ところが、院長先生が亡くなって、いざ相続ということになった。最初のもくろみでは、十八億円の借金、それに田園調布と葉山、伊東の別荘があれば、どれかを処分しても、西麻布のビルは残せるだろうというものだ。たしかに、西麻布のビルだけでは、相続税がかけられてしまえば、とても残せるものではない。
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売却して税金を払うしかないだろう。だから、「借金をして、総評価額を抑えて……」との発想が出たわけだ。結局、西麻布のビル二十三億円、とそこからの借入金十八億円で購入した豪邸と別荘あわせて四十一億円の資産ができた。借り入れが十八億円あるから、相続税もほとんどかからないという判断である。ところが、バブルが崩壊した。まず、西麻布のビルが、すでに十億円の評価しかなかった。田園調布の五億円の物件が、一億五千万円。十三億円で買ったふたつの別荘が五億円。合計しても十六億五千万円にしかならない。借金は十八億円である。ここにいたって、ようやく奥さんや娘さんが慌て出した。